第8回 経営者に聞きたい!〜私たちのまち、かわさき〜
今回は、「最高の音質を再現」を企業テーマとし、アナログ向けオーディオ製品を部品から一つひとつ手作りで仕上げている株式会社オーディオ・ノートの芦澤雅基(あしざわまさき)さんにお話をうかがいました。
掲載日:2010/02/16

―― まずはじめに、「オーディオ・ノート」の事業やサービス内容をお聞かせください
社名が表すとおり、オーディオ製品の製造販売を行っています。
オーディオはトータルバランスがとても大切で、音の入口であるカートリッジから音の出口であるスピーカーまで、全てを手作業で製造しているのが弊社の特徴であり強みだと思っています。
また、コンデンサーやトランスなど、製品の決め手になる部品も内製化しています。
効率やコストを考えれば外注での製造や既存の部品を使うのが良いのでしょうが、「自分たちが表現したい音」「心に訴える音」を追及していくと、やはり人任せにできないのです。
――「オーディオ・ノート」の製品はレコード、すなわちアナログ機器が主ですが、デジタル全盛の今日においてアナログへのこだわりを教えてください
ハイスペックのデジタル機器を使うことで雑音やひずみを極限まで減らしても、それがそのまま「良い音」とは呼べない可能性があります。
ただ、けっしてデジタルだからダメと否定したり、アナログが絶対と思っていたりするわけではないのです。デジタルは保存するにしても複製するにしても基本的には劣化しないし、コンパクトに収納できるなど優れている点がたくさんあります。
デジタルオーディオの原理に大きな問題があるわけではありません。ゼロか1か、“あるか、ないか”の信号によって作られているデジタル信号を、人間の耳に聞こえる音、すなわちアナログ信号に変換する過程での信号の扱い方、回路の考え方が重要だと思います。デジタルとはいえ実際の回路はアナログ的要素が多分に存在しております。
アナログレコードの方が人間的で深みがあり、心の琴線に触れる音を再現するものが多いのが原状ですが、その、アナログを極めることでCD等のデジタルオーディオもより良いものになると信じています。

―― 事業を始められたきっかけを教えてください
創業者である近藤公康が、スタジオ機器に精通したエンジニアとして大手レコードメーカーの現場で辣腕を振るっていた当時、レコーディングスタジオにもアンプ回路革新の波が押し寄せて差動増幅アンプが主流になり、トランスの必要性が問われだしました。
しかし近藤は「差動増幅アンプによって電気特性は向上するが、それは音質の向上につながるのか?」という疑問を抱いていたと言います。最高の材料と製造方法によって作り出されるトランスは電子式よりも良質な音を送り出せる、という信念を持っていた近藤は、1976年に大手レコードメーカーを退社してオーディオ・ノートを設立しました。
「電気抵抗が最も低い導体を使うことで切れ味鋭い音質が生まれるのでは?」と考えた近藤は、主流であった銅に比べて電気抵抗が低い銀でマグネットワイヤーを作り、この銀線を用いたMC昇圧トランスを開発します。このMC昇圧トランスは新鮮な響きの音が奏でられるとともに、それまでのトランスのイメージを一掃するものでした。
銅と銀、たった数%の導電率の違いですが、そこから計り知れない音の違いが現れたのです。これは、科学的にはまだ説明がついていない部分になります。
こうして世界で初めて生まれた銀線オーディオでしたが、ラインケーブルやスピーカーケーブルも緻密さや情感豊かな音、音質などの良さで音楽ファンの間で高い評価を得ています。

―― 近藤氏から社長を引き継がれた思いなどをお聞かせください
オーディオ・ノートは2004年に近藤が会長、私が社長と二人体制になりましたが、近藤は2006年にラスベガスでのイベントへ出張中に急逝してしまいました。
私たちのような手作業で作るオーディオ機器は作り手によってまったく異なる音になりますし、極端に言えば、同じ作り手でもその日のコンディションによっても音が違ってきます。ですので、身近で近藤の音作りを咀嚼してきた私にバトンが託されたのだろうなあと感じています。
「どういった音を出したいのか」ということがオーディオメーカーのキャラクターであり、その音に共感してくださる方がファンになってくださります。オーディオ・ノートの海外ブランドである「KONDO」は日本での知名度は残念ながら高くはありませんが、ヨーロッパを中心に「ハイエンドオーディオはKONDO」というほどに多くのご支持をいただいており、世界のトップブランドでありオーディオ業界を牽引するリーダーであると自負しています。
ですので、近藤が逝去した時には「KONDOの音はどう変化するのか?」が非常に注目されましたが、それまでのKONDOファンにも納得していただけたようなので、うまく引き継げたと思っています。
株式会社 オーディオ・ノート

http://www.audionote.co.jp/
『オーディオ機器は工業製品でありながらも、芸術の領域まで来ているジャンルである。』と語る芦澤さん。オーディオ・ノートの主力製品の一つであるパワーアンプは月産3〜4台のペースであり、パーツの一つ一つからじっくりと作りこまれていることが伺える。また、写真のターンテーブルにしても、駆動部が再生の音質に及ぼす影響を追求した結果、ドライブベルトを特注品の「つなぎ目のない環状の木綿糸」としたそうである。
まさに、量産品には出せない音を創り出すための芸術品とも言うべきプロダクトであるが、モバイル機器が全盛の昨今、オーディオ機器向けのコンデンサ等のパーツが市場からどんどん減ってきているため、『毎日がパーツ探しのようなものだ』とのこと。

- 所在地
- 川崎市幸区下平間242
- TEL
- 044-520-3150
- URL
- http://www.audionote.co.jp/









